初めての試合を前にして、何をすれば良いか分からず不安な選手は多いものです。練習の量は落とすべき?食事はどうする?前日の睡眠は?この記事では、ヘッドコーチ川村京太(第75回全日本フェンシング選手権大会・男子フルーレ個人優勝)の試合準備ルーティンをベースに、試合前の調整方法を3段階で解説します。
「試合当日に実力の9割を出せる」ことを目標に、2週間前から当日朝までの時系列で解説します。実際にリッツの生徒さんに伝えている内容ですが、他のスポーツにも応用可能な内容です。
なぜ試合前の調整が重要か
「本番で実力を出せない」の正体
初試合でよくある失敗は、普段の練習では出せる技が本番では出ないこと。これは技術不足ではなく、調整不足が原因のことがほとんどです。
試合で実力を出すための3条件
- 身体が回復している(疲労が抜けている)
- 精神が落ち着いている(過度の緊張がない)
- 戦略が明確(何をやるべきかが分かっている)
この3つが揃うと、練習の9割の実力が出せます。どれか1つが欠けると6-7割に落ちます。
試合前調整の3原則
- 心理調整 - 不安を味方に変える
- 身体調整 - コンディションをピークへ
- 戦略調整 - 対戦相手・展開の想定
この順番に沿って準備すれば、初試合でも実力の9割を出せる状態に持ち込めます。
試合2週間前:基礎技術の固め込み
この時期は新しい技術を導入しない時期です。
やること
- 試合で使う技術のみに絞り、反復精度を上げる
- パリー・リポスト、ファントなど鉄板技のフォーム確認
- 練習試合を多めに入れ、実戦感覚を慣らす
- 戦術パターンの「引き出し」を確定させる(3-5パターンに絞る)
やらないこと
- 新しいフェイントや戦術の導入(自信がない技は本番で出ない)
- 急な練習量増加(怪我リスクの大きな上昇)
- 他の選手の動画を見すぎて戦術が揺らぐ
2週間前の練習メニュー例
| 曜日 | 内容 | 時間 |
|---|---|---|
| 月 | 基礎フットワーク + 技術反復 | 60分 |
| 火 | 休養 or 軽いストレッチ | 20分 |
| 水 | 練習試合 × 4本 | 90分 |
| 木 | 休養 | - |
| 金 | 戦術確認 + 技術反復 | 60分 |
| 土 | 練習試合 × 4本(動画撮影) | 90分 |
| 日 | 動画分析 + メンタル整理 | 30分 |
試合1週間前:コンディショニング重視
練習は量ではなく質に切り替えます。
やること
- 1日の練習時間を30-50%減らす
- ストレッチ・体幹・軽めのフットワーク中心
- 前週の練習試合を動画で振り返り、修正ポイントを言語化
- 会場へのアクセス・時間のリハーサル
食事
- 糖質多め・タンパク質豊富・脂質控えめ
- 試合直前まで水分補給を計画的に
- 試合当日の胃腸負担を考え、消化に時間のかかる食品は控える
- 試合7日前から生魚・生肉・新しい食品は避ける(胃腸トラブル予防)
睡眠
- 毎日7-9時間の睡眠を確保
- 就寝・起床時間を試合当日のスケジュールに合わせる
- 試合直前3日間は深酒・夜更かしを避ける
試合3日前:完全休養日を設ける
多くの選手が「練習量を保ちたい」と思う時期ですが、3日前の完全休養は極めて効果的。
休養日の過ごし方
- フェンシング関連の思考を意図的に遮断
- 散歩、読書、好きな映画など、完全リラックス
- 睡眠は7-9時間を確保
- 軽いストレッチ・散歩は可、激しい運動は厳禁
休養明けの翌日(試合2日前)には、体が軽く、動きがキレる感覚を得られます。
休養日に「やってはいけない」こと
- 長時間のPC・スマホ(眼精疲労・首肩疲労)
- 新作ゲームの没頭(睡眠時間を削る)
- 長距離の旅行・外出
- アルコール摂取
試合2日前:軽めの技術確認
完全休養明けの2日前は、30-60分の軽い練習に切り替えます。
メニュー
- ウォームアップ 10分
- フットワーク(基本のみ、バロンド等は控える)15分
- パリー・リポスト 10セット
- ファント 10本(深さよりフォーム重視)
- クールダウン 10分
負荷は「気持ちいい」で止めるのが鉄則。疲労を残さないことが最優先です。
試合前日:メンタル整理に集中
身体はもう仕上がっています。前日は精神の整理が最優先。
準備リスト(前日夜)
- 用具の最終点検(剣の曲がり、マスクの導通チェック、ボディワイヤーの断線確認)
- ユニフォーム・シューズ・着替えをバッグに整理
- 会場・集合時刻・持ち物のリストを紙に書き出す
- 試合展開の簡単なイメージトレーニング(5-10分)
- 翌朝の起床時刻を決める(試合開始3時間前)
用具チェックリスト
睡眠
- 試合前夜は眠れなくても焦らない(筋肉は前々日の睡眠で回復している)
- スマホ・カフェイン・大量の水分を控える
- 軽めのストレッチでリラックスして就寝
- ベッドに入る時刻を通常より30分早めに
試合当日の朝
起床後のルーティン
- 起床は試合開始の3時間前が理想
- コップ1杯の水 + 軽い朝食(お茶漬け・バナナ・ヨーグルト等)
- 10分の軽いジョグ・ストレッチで体を起こす
- 会場には試合開始の1時間前に到着
朝食メニュー推奨例
しっかり食べたい場合: - ご飯 + 梅干し + 卵 - 野菜スープ - バナナ
軽めが好みの場合: - 雑炊 or おにぎり1つ - ゼリー飲料
ウォーミングアップ(試合40分前から)
- 動的ストレッチ(5分)
- 軽いフットワーク反復(10分)
- 相手との軽いアップ(10分) - 構えのチェック、パリー感覚を取り戻す
- 静的ストレッチで柔軟性確保(5分)
- 残り10分は呼吸を整えながらイメージトレーニング
試合直前のメンタル準備
緊張を味方にする3つの方法
- 深呼吸 - 4秒吸って8秒吐く、を5回
- ポジティブなセルフトーク - 「負けたらどうしよう」ではなく「自分の技を出し切る」
- ルーティン化 - 毎回同じ動作(剣を2回素振り、マスクを被る前にマスクの内側を触る等)
過緊張の対処法
- 筋弛緩法(肩をギュッと上げて、一気に脱力する × 5回)
- 軽い笑顔を作る(強制的に表情筋を緩める)
- ウォームアップ相手との軽い会話(人間らしさを取り戻す)
不安になった時の「3つの自問」
- 「今日この試合で何をしたいか?」(目標の再確認)
- 「これまでの練習で自分は何を身につけたか?」(自信の再確認)
- 「最悪の結果でも何を学べるか?」(失敗許容の枠組み)
試合中の戦術的調整
1ポイント目
- 攻めすぎず、相手の動きを観察する
- 相手のリズム・得意技・弱点を読む
- 最初の2-3分で相手の戦術パターンを把握
リードしたら
- 自分から攻めない、相手の攻撃を待ってパリー・リポスト
- 時間を使い切る戦術にシフト
ビハインドなら
- リスクを取って攻撃権を先に取る
- 相手の得意パターンを外れた攻撃を仕掛ける
僅差の終盤(残り30秒)
- 焦らない(焦りは必ず読まれる)
- 最も得意な戦術1つに絞る
- 主審心証のため「攻撃姿勢」を見せる
試合後の振り返り
勝敗に関わらず、試合後30分以内に以下を記録: - 良かった動作3つ - 改善すべきポイント3つ - 相手の特徴メモ(次に当たる可能性があるため)
この積み重ねが、次の試合で明確に結果を変える材料になります。
振り返りシート例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時・大会名 | |
| 対戦相手 | |
| 勝敗・スコア | |
| 良かった動作 | |
| 悪かった動作 | |
| 相手の特徴 | |
| 次回への宿題 |
試合後の身体ケア
- 軽いクールダウン(ジョグ5分 + ストレッチ10分)
- 水分・電解質補給
- たんぱく質 + 糖質の食事
- 早めの入浴(ぬるめの風呂で20分)
- 試合当日はしっかり睡眠(疲労回復最優先)
よくある質問
Q1: 試合前に体調を崩したらどうすれば?
A: 軽い風邪程度であれば、無理をせず保守的な戦術で臨みます。熱がある場合は棄権も選択肢。体調不良で無理に試合に出ると、怪我リスクが急上昇します。
Q2: 試合前夜に緊張で眠れない時は?
A: 焦らないことが最重要。目を閉じているだけで疲労の半分以上は回復します。逆に「眠れない!」と焦ると交感神経が高まり、翌日に悪影響。暖かいミルク、軽い読書、呼吸法で副交感神経を優位にしましょう。
Q3: 初試合で勝てなかったらどう考える?
A: 初試合で勝つ選手は稀です。勝敗より「練習した技が1つでも出せたか」を成功基準にしてください。そのマインドが長期成長につながります。
Q4: 試合会場での過ごし方は?
A: 他選手の試合を無暗に見ず、自分のペースを守るのが鉄則。耳栓・アイマスクでリラックスする選手もいます。
リッツの試合サポート
リッツフェンシングアカデミーでは、試合に出場する生徒さんに対し以下のサポートを行っています:
- 試合前2週間の個別調整メニュー作成
- 当日の帯同(希望者・東京都大会限定)
- 試合後の動画レビュー(翌週のレッスンで実施)
初試合を控えた方は、無料体験レッスンまたはレッスン時にぜひご相談ください。

